業績評価(パフォーマンスレビュー)とは?目標や項目の設定方法・メリット・デメリット

業績評価とは
業績評価とは、個人または部門といった単位において、会社の売り上げや業績にどれほど貢献したかを評価する制度のことです。
また、評価対象の「業績」の定義については拡大傾向にあります。
具体的には、営業職による直接的な利益獲得だけでなく、技術職やマーケティング職など、獲得までのプロセスにおける貢献やその組織体制の維持・業務効率化における貢献なども対象とされてるというものです。
業績評価のメリット
前述のように定義される業績評価では、どのようなメリットがあり、そのメリットが会社にどのような利益をもたらすのでしょうか。
本パートでは、業績評価のメリットについて、3つに分けて解説していきます。
1. 組織の生産性を高められる
1つめのメリットは、組織における効率の改善、すなわち生産性の向上です。
業績評価は一定期間における定量的な成果を目標として評価を行うことから、評価につながる目標があることで社員のモチベーションが向上し、より効率的な業績向上が期待できます。
また、業績が向上することによって、さらに社員のモチベーションに還元されるなど、会社にとって好循環が生まれるでしょう。
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2. 社員の能力を引き出すきっかけになる
2つめのメリットは、目標管理制度と併用することで社員の潜在能力を引き出す契機となる、ということです。
これは、業績評価の定量的な成果を評価する性質から、MBOのような目標管理制度とリンクさせて用いることによって業績評価がより効果的になる、というものです。
具体的には、社員が主体的に個人目標を検討し、それを上司に申告する形で目標を決定するという目標管理制度の性質によるもので、これによって社員が主体的に自分の目標に対してどのようなアプローチをとればよいかなど、PDCAを回すこととなるのです。
これによって、今まで発揮されていなかった能力が発揮される可能性があるということです。
社員の潜在能力が引き出されることにより、人材開発の視点からのメリットだけでなく、社員個人のモチベーション向上や、その集積としての会社の業績向上といったメリットがあるでしょう。
そのような目標管理の効果を最大化させるために必要なツールのおすすめ比較については、以下の記事にて解説しています。
3. 人件費の無駄を抑制できる
3つめのメリットは、年功序列的な性質を抑えることで人件費の無駄を抑制できるということです。
業績評価はその客観性や評価の明確さから、年齢やそれまでの実績などと関係なく評価することが可能です。
そのため、日本型雇用慣行をとる企業に起きがちな中高年層による不合理な人件費高騰を抑えることができ、人件費の適正化に寄与することができます。
人件費の適正化が実現することにより、優秀な社員に適切な報酬が支払われ、それらのモチベーション低下・離職を防ぐことができます。
離職による人材の流出を防ぐことは今の日本企業の大きな課題とされており、その要因や離職を防止するための知識は重要性を増しています。

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4. 評価を適正化できる
4つめの目的・メリットは、評価の適正化です。
業績評価では個人のあげた業績をもとに評価を行うため、数字上の成果を上げているのに評価されないという事態はまず起こりません。
また、詳しくは後述しますが、業績は外部環境に左右されることが十分に考えられるため、中長期的な待遇に反映させるかは慎重な検討が必要です。
定量的な評価はボーナスに、定性的な評価を待遇に反映させるなどすれば、社員一人ひとりの待遇と能力に乖離が生まれることは避けられるでしょう。
待遇やそのもととなる人事評価を適正化することは離職率の低下だけでなく、モチベーションアップによる生産性向上にも役立ちます。そのため、人事評価を適切に運用することの重要性は非常に増しているのです。

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業績評価のデメリット・注意点
前述のようなメリットがある業績評価ですが、同時にデメリットや注意しなくてはならない点があります。
本パートでは、業績評価におけるデメリット・注意点について3つに分けて解説していきます。
1. 評価単位を全社的に統一・明確化する必要がある
1つめの注意点は、実際の評価における評価単位(=業績単位)を明確にし、そのスケールを全社的にそろえるということです。
業績評価は、各社員があげた業績を純粋に評価するため、その評価の尺度が不明確であったり、部門によって不揃いだったりすると適正な評価は実現できません。
仮に評価単位が適切でないと、社員はその単位・尺度において業績を上げる努力をすることに意味を見出せず、社員のモチベーション低下や制度の形骸化につながってしまいます。
2. 目標に対するフィードバックを行う必要がある
2つめの注意点は、目標の達成度やそのプロセスに対するフィードバックを行わなくては意義が減少してしまうということです。
業績評価において、その定量的な成果に対する評価を行うことも重要ですが、最も重要なのはその成果に向かってどのような意識を持ち、どのようなアクションを起こしたかを明らかにして次の目標につなげることです。
具体例として、営業における成約件数を考えてみましょう。
成約件数が達成できなかった時に、その大きな原因として何が考えられるのか、自らに原因がある場合どのようなアクションを起こしていれば改善されたと考えられるかなど、言語化して説明できるようにしなくてはなりません。
仮に目標に対する振り返りを行わなければ、社員の目標達成に対する成長度が低下してしまい、会社全体でみたときに業績の伸び幅が小さくなってしまいます。
目標に対する振り返り、日々の業務に対する振り返りの効果を最大化させるためのツール・アプリについては以下で紹介しています。
3. 昇進とは別で評価する必要がある
3つめの注意点は、業績評価の反映は昇進とは別で評価しなくてはならないということです。
社員個人の成績は外部要因に左右されやすく、同じ努力量や業務量でもその成果にはばらつきが出てもおかしくありません。
そのため、業績評価は給与や昇進ではなく、賞与などに反映させることが望ましいといえます。
実際に株式会社ディー・エヌ・エーでは、昇給は「発揮能力」の伸び幅を基準とし、賞与を業績評価によって決めています。
この根底にある考え方は前述の通りで、担当したサービスの売り上げが爆発的に伸びたとしても、その要因は外部影響が大きかったり、一次的な伸長の場合もあるため、「成果」の大きさはボーナスに反映させているとのことです。
この制度により、社員の成長度を加速させるだけでなく、社員のモチベーションの維持・向上、全社的な意向の評価制度への反映に成功しています。
反対に、業績評価を昇進に反映させてしまうと、外部要因により能力に見合わない昇進が出てしまったときに社員の不満が発出し、社員のエンゲージメント低下や離職率の上昇といった弊害が生じてしまいます。
能力評価・情意評価との違い
以上のようなメリット・デメリットがある業績評価ですが、他の評価制度である能力評価・情意評価とはどのような点が異なるのでしょうか。
本パートでは、業績評価の能力評価・情意評価との違いをそれぞれに分けて解説していきます。
1. 能力評価との違い
能力評価とは、人材が保有する能力や業務中に発揮した能力に対して評価する制度のことです。
能力評価は個人の企画力や行動力、課題解決力などが評価されるために、ある程度成果と比例するものの、成果の過程としてどのような能力を発揮したかを評価しているといえます。
その一方で、業績評価は成果のみに焦点を当てるため、当人がそのプロセスで発揮した能力は直接評価には関連しないのです。
2. 情意評価との違い
情意評価とは、職務に対する姿勢や意欲を評価する制度のことです。
業績評価は具体的な数字を用いて目標とするため、その評価が客観的かつ行いやすいといえます。
その一方で、情意評価は具体的な数字によって測られるものではないため、評価が主観的かつ行いにくい傾向があります。
情意評価のような行動・姿勢に関する評価の多面性のためにバリュー評価やコンピテンシー評価の導入も有効です。
業績評価の運用の流れ
以上のように他の制度との違いがある業績評価ですが、実際に運用するうえではどのような流れとなるのでしょうか。
ここでは、日本企業の多くが取り入れている年次評価をベースとし、1年間の業績評価の大まかな流れを解説します。
業績評価の運用において密接な関係のある目標管理を効率化させるためのツール・システムについては以下の記事をご覧ください。
1. 目標設定
まず第一に、目標を設定します。
具体的には、上位の組織の目標を踏まえたうえで部下が主体的に個人の業績目標を立て、上司に申告します。
これを受け、面談を通じて目標の内容や難易度を調整し、互いに合意のある状態で目標の最終決定を行います。
このとき、上司が目標を押し付けたり、部下が一視点的に目標を設定することは避けなくてはなりません。
もしそのような目標設定のプロセスを踏んでしまうと、部下のモチベーションが低下したり、目標設定の意義が減少してしまいます。
逆に、適切に目標を設定することでそのために何を意識して業務に取り組むべきか明らかになり、部下が業務に取り組みやすくなります。
2. 業務遂行・目標の修正
次に、実際に業務を遂行しつつ、期中に目標を修正する必要があれば修正します。
業績評価は定量的な成果のみを見るために、成果に外的要因の影響が出そうな場合は迅速に目標の修正を行います。
このとき、目標の修正を適切に行わなくては、目標達成に対する部下のモチベーションが低下してしまい、会社の業績にも影響してしまいます。
逆に、迅速かつ適切に目標の修正を行うことで、部下は一年を通してモチベーション高く業務に取り組むことができ、業績も上がることが考えられます。
3. 達成度の評価・フィードバック
最後に、目標に対する達成度の評価と、フィードバックを行います。
具体的には、人事評価の際に
- 目標に対する達成度はどのくらいだったか
- この結果の原因は何なのか、どう考えているか
- 来期の目標をどのように考えるべきか
- 具体的に来期の目標のためにどうしていくべきか
についてフィードバックしていきます
このとき、フィードバックを丁寧に行わないと、部下が今期の結果をどう位置付ければよいのか、来期に向けて何を考えればよいのかが明確にならず、人材育成の観点から効果の薄いものとなってしまいます。
逆に、フィードバックを丁寧に行うことで来季に向けての方針が明らかになり、よりスムーズに来期の目標を立てられるようになります。

- フィードバックが目標の達成に欠かせない理由とは?
- フィードバックをする上で注意すべき4つのポイントとは?
- 上司と部下との信頼感を高めるフィードバック方法とは?
- 上司がフィードバックする上で持つべきマインドセットとは?
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目標設定の方法
業績評価の1年の流れについては前述の通りですが、その最初の手順である目標設定において、具体的にどのように設定すればよいのでしょうか。
本パートでは、業績評価の手順における目標設定の方法について、3つに分けて解説します。
1. 期限の設定
最初に、目標とする期限を設定します。人事評価の周期と合わせることがほとんどで、年次評価であれば1年間、半期評価であれば半年に目標の時期を設定します。
また、年次評価であっても業績評価やそれに準ずるフィードバックを半期に1回行うことにより、以下のメリットがあります。
信頼関係を強化できる
メンバーのパフォーマンスに対し、より頻繁に評価・レビューすることにより、メンバーは「マネージャーがメンバーの成功に寄与し、キャリアや成長に配慮している」と再確認することができます。
これにより、マネージャー・メンバー間の信頼関係のさらなる強化につながるのです。
未来志向の評価ができる
1期に1回のレビューであれば、どうしても過去のパフォーマンスに焦点を当てたレビューの割合が多くなってしまいます。
これを半期に1回、あるいはそれより細かく評価・レビューを行うことによって未来に焦点を当てたレビュー、すなわちフィードフォワードができるようになります。
期待値の調整ができる
業績の評価の理想として、被評価者を驚かせない、すなわち評価と認識のズレを解消することが挙げられます。
評価・レビューの頻度を上げることにより、メンバーの認識と実際の評価のズレを小さくすることができ、メンバーのモチベーションアップやパフォーマンスアップにつながります。
2. 成果の設定
次に、成果の目標について具体的な数値を設定します。
数値の評価は100%を超えたら高評価、下回ったら低評価となるような目安で設定しますが、難易度については前述したように部下一人で決めることなく、多くの視点を用いて決めることが望ましいでしょう。
このとき、評価の平等性の観点から、上司は目標の難易度が社員ごとに不揃いにならないように注意しなくてはなりません。
その点でも、成果目標の設定は慎重に行わなくてはならないのです。
3. 行動目標の設定
最後に、成果目標の達成のためのに何を意識して行動すべきかといった行動目標を定めます。
この目標は評価には直接かかわりませんが、社員が成果目標の達成のためにどのようなプロセスを経るべきかを意識するために非常に重要です。
行動目標の設定は、成果目標の達成から逆算し、できるだけ具体的かつ言語化とするとよいでしょう。
行動目標が曖昧になってしまうと、部下がそれに基づいて行動したか否かが期末の振り返りで説明できず、効果の薄いものとなってしまいます。
業績評価における質問設定のポイント・質問例
社員の業績・パフォーマンスを評価するのに最適な質問を決定するのは難しいと思えるでしょう。
従業員は、仕事のさまざまな側面について。多様なフィードバックを生む業績評価から最も恩恵を受けます。
従業員の業績評価が包括的な視点を提供することを保証するために、人事は、定量的および定性的の2種類の業績評価質問を組み込む必要があります。
1. 定量成果に関する質問
企業は、データに基づいて成長していきます。
業績評価の質問が定量的なデータに基づいていれば、誤解の余地がなくなり、業績パターンをより正確に理解することができます。
そのためには、経営層や人事チーム、マネージャーが、明確に定義されたベンチマークと進捗状況を測るための主要業績評価指標(KPI)を設定する必要があります。
また、定量的な業績評価には、チームや従業員レベルの目標を組織全体で透明性をもって追跡するための適切なテクノロジーが必要となります。
定量的な質問の例は以下の通りです。
- 目標を何パーセント達成しましたか?
- この人の仕事は収益にどの程度の直接的に貢献しましたか
- この人のアウトプットは会社の平均と比べてどうでしたか?
- この人は時間通りに完了した課題はいくつでしたか?
- この人に3〜6か月で達成してほしいベンチマークは何ですか?
2. 定性成果に関する質問
業績を評価するためにデータを活用することは有用ですが、実際にはほとんどの職務において成功の定義は抽象的で曖昧であるケースは少なくありません。
業務のある側面は数値で測定できて、他の面は会社に無形の価値をもたらしている場合は、評価する際には従業員の全体的な影響を考慮すべきです。
組織をより良い職場にするための資質を持つ人がいれば、その貢献をパフォーマンスの一部として認識することが重要です。
定性質問は、従業員に様々な意味での成長の機会を与えます。
定性質問のサンプルは以下の通りです。
- この人物はどの程度まで細部にこだわることができたか?
- この人物は、ほとんど、あるいは全く監督されなくても、どの程度まで独立して仕事ができたか?
- この人物は、どの程度の品質の仕事をしていたか?
- この人物は、どの程度まで周囲の人々のスキル向上に貢献したか?
- この人物は、どの程度まで問題の解決策を自分で考えていたか?
なお、評価の質問には、常に自由回答形式の定性的な質問を添付する必要があり、評価の根拠や具体例を明示することを評価者に求めましょう。
まとめ
以上のように、本記事では業績評価について解説してきました。
企業の成果主義的な成長のために不可欠な業績評価をよりよいものとするために、本記事で紹介したポイントや手法を導入してみてはいかがでしょうか。
【人事評価の納得感を高め、エンゲージメントを向上】
評価制度の運用のポイントは「リアルタイムフィードバック」
組織の実行力と推進力を高めるノウハウを集約。
● 目標更新の度にチーム/全社に共有され、進捗を可視化
● 全社/部門目標と個人目標を紐付かせ、貢献領域を可視化
● 1on1の実施状況が可視化され、施策の浸透度と課題を特定
● 賞賛のコメントが全社に共有され、社員の士気を向上
● 週報でコンディションを申告し、組織課題をすぐに特定