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モチベーションとは
モチベーションとは、目標に向けての原動力のことです。「動機」や「やる気」と言い換えられることもあります。
モチベーションが高いかどうかは、目標に向かってどのくらい意欲的に取り組めるかどうかに大きく関わります。そのため、部下のモチベーションが高まるほど、チーム全体での目標達成に近づくと考えられるでしょう。
モチベーションには大きく分けて「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2種類が存在します。ここでは、外発的動機づけと内発的動機付けについて詳しく解説します。
外発的動機付け
外発的動機づけとは、外部から与えられるものが目的となって、発生するモチベーションのことです。
例えば、給料などの外的な報酬や地位の向上などが外発動機づけに値します。それらの与えられる報酬が従業員の期待するものに見合っていないと、従業員のモチベーションを掻き立てることはできません。
従業員の努力の過程や成果を踏まえた上で、当人が納得できる報酬を設定することが必要となります。

内発的動機付け
内発的動機づけとは、自身の内側から湧き出るモチベーションのことです。つまり、外的な報酬がなくても、決められた目標の達成に向けて、主体的に取り組む意欲がある状態を指しています。
内発的な動機づけがあるということは、仕事によって与えられる報酬(副産物)でなく、仕事そのものに価値を見出しています。
自分自身の成長のためや、「誰かのためにしたい」と言う他者貢献によって突き動かされるなど、内発的な動機がある場合、仕事そのものが目的となるため、高い集中力を発揮するでしょう。
モチベーションマネジメントとは
モチベーションマネジメントとは、従業員の内発的動機付けを高め、生産性を向上させるマネジメント方法のことです。
内発的動機づけは、仕事そのものに価値や目的を見出している状態なため、従業員がより意欲的に仕事に取り組むと考えられます。
マネージャーや会社が、従業員の内発的要因のきっかけを生み出してあげることで、従業員がよりやる気を出して高い生産性を生み出せるようになるでしょう。
モチベーションマネジメントが重要な理由
社員にモチベーション高く仕事をしてもらうという目標は、会社の経営者や人事担当者にとって、非常に重要な課題です。
なぜなら、モチベーションが高い社員の生産性は、約2倍になるといわれているからです。(出典 :https://mitsucari.com/blog/motivation_management/)

つまり、従業員のモチベーションが向上すると、結果的にチーム全体の生産性も向上し、業績アップにつながると考えられます。そのため、マネージャーやリーダーはモチベーションマネジメントにより、従業員のやる気を引き上げることが重要といえるでしょう。
社員一人ひとりが高い意欲を持って業務に取り組めるよう動機づけをし、そのサポートをするモチベーションマネジメントは、企業の業績を伸ばすための大きなカギとなります。
モチベーション低下の要因
モチベーション高く仕事をすることは、本人の仕事のやりがいや楽しさにつながるだけでなく、組織全体にもメリットを及ぼします。
従業員全員がモチベーション高く仕事に取り組めている状態は理想ですが、現実はそのようにうまくいきません。では、なぜ従業員のモチベーションは低下してしまうのでしょうか?
ここではモチベーションが低下する要因を解説します。
1.目標設定が適切でない
モチベーションが低下する要因の1つ目は、目標設定が適切でないことです。例えば、あまりにも高すぎる目標が設定されていると、実現可能性から遠のくため、本人のやる気は低下してしまいます。
反対に目標を下げすぎてしまうと、努力をせずとも容易に目標達成ができるため、意欲が湧いてこないでしょう。
そのため、従業員がPDCAを回して仕事の取り組み方を改善することで、目標達成に手が届くような「適切な目標設定」をすることがモチベーションを引き出す上で重要といえます。
2.正当な評価が与えられていない
モチベーションが低下する要因の2つ目は、正当な評価が与えられていないことです。
努力や成果に見合った評価や給料が得られなければ、従業員に「自分のがんばりが正当に評価されていない」という印象を与えてしまいます。
従業員のモチベーションを維持するためには仕事量や努力の過程、仕事の成果を適切に把握し、それに見合った給料や評価を与える必要があります。
3.職場のコミュニケーションが円滑でない
モチベーションが低下する要因の3つ目は、職場のコミュニケーションが円滑でないことです。
職場でのコミュニケーションが円滑でないと、些細な疑問を共有できません。それだけでなく、仕事での悩みや不安も解消できないため、「やり方がわからないのに聞きにくい」「うまくいかないのだが、誰にコツを聞けばいいのかわからない」
といった従業員の心理的な不安が増えてしまいます。
やる気アップの鍵となる「モチベーション理論」とは
人が何によって動機づけられ、やる気が高まるのかについて示した理論のことをモチベーション理論といいます。
どのようなモチベーション理論が当てはまるのかは人によって異なるため、その相手に応じて適切な手段を選ぶ必要があるでしょう。
ここでは、モチベーション理論について詳しく解説します。
期待理論
モチベーション理論の1つめは、期待理論です。この理論では、「モチベーション=期待(努力したら得られる結果)×誘意性(得られる外的報酬の価値)」と定義します。
期待理論では、従業員が求める適切な報酬を与えることで、相手の意欲を引き出すことができます。そのため従業員何を求めているのかを理解することが非常に重要となります。
1on1の設定や日々の気軽なコミュニケーションから、従業員が求めているものを知っておく必要があります。
公平理論
モチベーション理論の2つ目は、公平理論です。この理論は、「人は”自分の仕事への取り組みの対価としての報酬”と”他人の仕事への取り組みの対価としての報酬”を比較し、公平性を感じるような状態に近づく行動をとるよう動機づけられる」と定義しています。
たとえば、あまり努力していない他の従業員が自分と同等の報酬をもらっている場合、相手と「公平な努力」に近づけるため、以前よりも努力しなくなってしまいます。
公平理論から考えて社員のモチベーションを上げるためには、貢献の内容と報酬の大きさが社員同士で同等になるようにすることが大切です。
欲求理論
モチベーション理論の3つ目は欲求理論です。マクレランドの欲求理論では、従業員の行動の動機を「達成動機(欲求)」「親和動機(欲求)」「権力動機(欲求)」「回避動機(欲求)」の4つに分類しています。
それぞれ4つの動機をもつ従業員のやる気を引き出すために必要な行動は以下の通りです。
達成動機
- 低すぎず高すぎないリスクを好む
- 自分の行動に対して率直なフィードバックを求める
- チームよりも個人の進捗に目が向くため、自分の力で進めることを好む
達成動機をもつ従業員は上記のような特徴があります。そのため、適切なタイミングで率直なフィードバックを与えながら、責任の度合いが重すぎない仕事を任せていくと良いでしょう。
親和動機
- 人の役に立つことを好む
- 他人からよく見られ、好かれたい願望がある
- 心理的な緊張状態に弱い
親和動機をもつ従業員は上記のような特徴があります。そのため、仕事の成果や結果に対して「〇〇してくれたことが役に立った、ありがとう」と、感謝や称賛を伝えて認めることがモチベーションの向上につながります。
権力動機
- 責任ある仕事を任されるとやる気が出る
- 人の上に立つことを好む
- 地位や身分の向上を重視する
権力動機をもつ人は上記のような特徴があります。そのため、あるプロジェクトのリーダーやマネージャーといった責任が高い仕事を少しずつ権威移譲していくと良いでしょう。
回避動機
- 失敗を恐れるため、新しいことへの挑戦をあえてしない
- 批判を恐れて周囲に意見を合わせる
回避動機をもつ人は上記のような特徴があります。そのため、新しい意思決定や新しい仕事への挑戦機会を与えるのでなく、すでに決まっているルーティンの仕事を任せると良いでしょう。
新しいことへの挑戦を与えることは、心理的負担を増大させ、モチベーションを低下させてしまうこともあります。
上司の存在が部下のやる気向上に欠かせない理由とは
上司を信頼している部下は、モチベーションが高くなるという結果が出ています。以下のグラフは、「上司に対して信頼感をもっているか」という質問に対する回答結果とその結果が示すモチベーションの度合いです。(出典:https://jinjibu.jp/article/detl/hr-survey/2038/2/)

上記のことから、上司と部下の関係性が部下のやる気に与える影響は大きいと考えられます。そのため、上司からの評価や、期待感、声かけなどの日頃のコミュニケーションは信頼関係を構築する上で重要になるでしょう。
マネージャーやリーダーに任せるべきこと
ここまで、マネージャーやリーダーといった上司の存在が部下のモチベーション向上に大きな影響を与える理由について述べました。
では、マネージャーやリーダーは部下のモチベーションを上げるため、具体的にどのような行動をとるべきなのでしょうか。
ここでは、経営者の方が従業員のやる気を向上させるために、マネージャーやリーダーに任せると良いことを解説します。
1.まずは自分自身のやる気を上げる
マネージャーやリーダーに任せるべきことの1つ目は、まずは自分自身のやる気を上げてもらうことです。
部下は最も身近な先輩である、マネージャーやリーダーの背中を見て成長します。そのため従業員を引っ張る存在である、マネージャーやリーダーのやる気が低ければ、部下のモチベーションは上がらないでしょう。
必要に応じては、経営者からマネージャーやリーダーへの評価や報酬を改めることで、モチベーションを引き上げましょう。
2.結果に対して適切なフィードバックを与える
マネージャーやリーダーに任せるべきことの2つ目は、結果に対して適切なフィードバックを与えることです。
フィードバックを効果的に行えば「できないだろう」といったネガティブな感情を「自分でもできそうだ」とポジティブな感情に転換できます。
なぜなら、仕事の取り組み方に対してフィードバックをもらうことで、目の前の課題解決の糸口がつかめるからです。その結果、それまで悩んでいた問題にも前向きに取り組む気持ちが生まれるでしょう。

3.賞賛の文化を作る
マネージャーやリーダーに任せるべきことの3つ目は、賞賛の文化をつくることです。相手の行動に対して「感謝している」と改めて言葉で伝えることで、“褒める”機会、“褒められる”機会が増加し、ポジティブなコミュニケーションが活発化させることができます。
「承認」の積み重ねによって、従業員は自分の仕事を前向きに捉え、自分の努力成果に自信を持てるようになるでしょう。
4. 失敗を恐れることない環境をつくる
マネージャーやリーダーに任せるべきことの4つ目は、失敗を恐れない環境をつくることです。新しい可能性を秘めている挑戦は良いことのはずなのに、失敗を恐れて行動できないことは非常にもったいないことです。
挑戦に踏み出せない原因は、現状維持バイアスが働くためです。現状維持バイアスとは、“変化によって得られる可能性がある「リターン」より、それによって失う可能性のある「リスク」の方に強く反応してしまう心理作用です。
しかし、部下がみんな現状維持を好み、主体的に行動しなくなってしまうと、リーダーが単独でチームを引っ張っていくような「個人の主体性がない組織」となってしまいます。
そのため、マネージャーやリーダーは、従業員の新しい挑戦を促進し、認めていくことが必要でしょう。
まとめ
本記事では、従業員のモチベーションを向上させる重要性と、その方法について解説しました。従業員のモチベーションを高めるにあたって、マネージャーやリーダーは非常に大きな影響を及ぼします。
そのため従業員のモチベーションを高めるためには、まずマネージャーやリーダーがそのように従業員と関わっているのか知る必要があります。