S級マネジメント成果を出すチームをつくる
マネジメント・育成につながる情報をご紹介

1on1の「対話の質」を高める3つの目的設定│信頼関係の構築・フィードバック・経験学習

116

1on1の導入を進めてきた会社であれば、対話の回数(=量)が増えた事によって、「部下の事を以前より理解出来るようになった」「認識のズレがなくなった」「組織の風通しが良くなった」などポジティブな効果を感じているケースが多いのではないでしょうか。

一方で、1on1という場を部下の「成長」という具体的な「成果」に結び付けるためには、目的設定や進め方に一定のコツと経験が必要となります。

本記事では、1on1やコーチングに8年以上従事され、現在は経営者や管理職向けのセッションを行われている星野さんに「1on1における対話の質を高める」事をテーマに、「信頼関係の構築」「フィードバック」「経験学習」の3つの観点から運用のポイントをお伺いします。

【プロフィール】
株式会社INDEE Japan 取締役 組織開発・事業開発ディレクター
株式会社iBRIDGE 代表取締役
星野 雄一

大手製造業を経て、IT企業でSCMコンサルティングに従事後、コンサルティング会社で大手製造業の人材育成・組織開発や開発効率化を数多く手掛ける。また、この頃からコーチ・業界業務知識・現役管理職の側面から管理職向けの1on1支援サービスを展開し始める。

最年少で経営幹部になり、業績向上とマネージャー輩出に貢献。その後、ITベンチャー企業の役員を経て、INDEE Japanにてイノベーティブな組織への変革支援に従事。

また、スタートアップ企業の経営者や事業部長クラスを中心としたエグゼクティブコーチングを多数展開。人材・組織開発を支援する株式会社iBRIDGEを設立、現在に至る。

本インタビューの結論・サマリー

本インタビューの結論は以下の通りです。

  • 信頼関係の根本にあるのは「私のために何かをしてくれた」という体験が継続的に行われること
  • 1on1におけるフィードバックは「ゴールの設定」「解像度アップ」「現状の理解」「成長に向けたきっかけ・自信づくり」の4つのステップで進める
  • 部下のゴールを把握する時には、「長期のキャリア観」「今の会社における短期的なキャリア観」「現在の仕事や案件に対するWILL」など複数のレイヤーで捉える
  • 部下の現状把握を促す際には、客観的な事実を振り返りサポートをしたり、本人が見落としている事実を伝えてあげることが有効
  • ゴールを設定したら、ベイビーステップを宣言してもらう
  • 本人が「自分ならできる」という自己効力感を持つサポートをするのも上司の仕事

1on1を通じて部下との信頼関係を構築する

―――星野さん、「1on1連載記事インタビュー」の第2回となりますが、本日もよろしくお願いします。早速ですが、1on1を導入する際のファーストステップとして「上司と部下の信頼関係の構築」を目指すケースが多いのではないかと思いますが、「信頼関係がある」とは具体的にどの様な状態なのでしょうか?

星野:信頼関係というのは目に見えませんし、測れないので中々難しい問いですが、お互いが信頼していると確信できている状態と言えます。

また、「〇〇について信頼している」といったように「前提条件のある関係性」であるとも言えます。

ですので、ある事柄や分野について、この人は「助けてくれる」「協力してくれる」という安心感や確信を持てている関係とも言えるでしょう。

この上司は現在取り組んでいる仕事に関しては知見も人脈を活かして、色々とサポートしてくれて信頼できるという文脈ですね。そこには、プライベートはあまり関係ありません。

一方で、すごく人間的に温かい人であれば、自分が落ち込んだ時や少しプライベートに踏み込んだような悩みをする相手としては信頼できるけど、仕事は能力的に信頼までは至らないという方もいるでしょう。逆に、上司から部下を見るのも色々な観点で信頼を置くのだと思いますね。

ですので、何に信頼を置いているかというのは、ケースバイケースで、裏切らないとか包み隠さないという意味合いもありますし、能力やスキルの発揮に信頼を置いているという意味合いもあります。

信頼の根本にあるのは「私のために何かをしてくれた」ということが体験できることであり、その体験が継続される事で、少しずつ信頼関係が醸成されていくのではないでしょうか。

1on1を通じて部下の成長を促すフィードバックをする

―――「信頼残高」という言葉がありますが、まさに解説頂いた通り、一朝一夕では信頼関係の構築はなし得ないものだと理解しました。逆に言えば、焦らず、じっくりと相手への貢献を継続していけば、「信頼関係がある」状態に到達出来るという事にもなりますね。

少しテーマが変わりますが、1on1は部下の成長のための場と定義される事が多い中で、フィードバックの重要性が注目されています。そもそもフィードバックはなぜ重要なのでしょうか?

星野:フィードバックには、人の成長において様々なメリットがあります。例えば、代表的なものであれば、「盲点に気付ける」「自信を持てる」「現状を再認識できる」などが挙げられるでしょうか。

―――確かに、良い所も悪い所も他人に指摘されて始めて気づくというのは誰もしも経験がありますよね。一方で、日本人は率直なフィードバックや指摘が苦手な印象があります。部下の成長を的確に促すためにフィードバックにおいて注意すべき点や踏むべき手順はありますか?

星野:フィードバックは以下のプロセスで進めていくイメージを持っています。

  1. ゴールの設定
  2. 解像度アップ
  3. 現状の理解
  4. 成長に向けたきっかけ・自信づくり

まずは、大前提として、本人がどう成長したいかを解像度高く相互理解することが大切です。

本人がどう生きたいか、どんなキャリアを歩みたいか、この会社で何をしたいか、この仕事や案件、この時期に何を得たいかといった複数のレイヤーで捉えていく事が重要です。

なお、本人が言語化できていないケースも多いため、ここを紐解く努力が必要です。ゴールの解像度アップが、1on1の最初に取り組むべき事であるとも言えます。

―――特に、若手や新人の場合は、まだキャリアの方向性が明確になっていなかったり、会社の全体像が見えていない事から、独力でゴールの解像度が上げていくのは難しいケースもありますよね。その様な場合には、上司との壁打ちは非常に有意義な時間なる事は間違いなさそうです。

星野:また、現状理解も同じくらい重要です。仕事に関するフィードバックは、まずは客観的な事実の把握から始めましょう。

  • ある出来事に対して前後で何が起きたか?
  • 相手の反応がどうだったか?
  • その時の本人の考えや感情はどうだったか?

事実を明らかにした上で、本人の内省を促していく事が重要です。現場で自分が同席していたら、振り返りの際に本人が見落としている事実を伝えてあげることも効果的ですね。

こうした丁寧な現状理解を進めていく事で、本人がゴールとのギャップを感じ取れたら、途中経過は順調と言って良いでしょう。

最後に成長に向けたきっかけ・自信づくりです。

課題が明確になっても、すぐに動けないというケースは多いのではないでしょうか。その様な場合、「何から着手して良いか分からない」「1歩目を踏み出すのが億劫」という心理が邪魔しているため、障害を取り除いてあげる必要があります。

―――出来るかどうかの不安が先行して、課題に着手するのが億劫になるというのは非常によく分かります。この様な部下の葛藤に対して、上司はどの様にアプローチすれば良いでしょうか?

星野:まずは、小さな進歩でよいのでベイビーステップを宣言してもらうのが良いでしょう。ベイビーステップなので大きな一歩ではなく、すぐにできそうな一歩で構いません。

「これなら出来そう」という感覚を大事にして下さい。振り返りの際もできていたことは伝えましょう。この時、「本当は出来るはず」と上司の側が信じられるかどうかがポイントです。上司による「信頼」「確信」は伝播して、本人の自己効力感に繋がるはずです。

1on1を通じて部下の経験学習を促す

―――上司の側が「出来るよ」と言い切ってくれる事で、自信を持って成長への第一歩を踏み出せたという経験を持つビジネスパーソンは多そうです。最後になりますが、1on1のテーマとして部下の「経験学習」の促進が挙げられるケースもありますが、実践のポイントについて教えてください。

星野:1on1が経験学習と併せ持って語られるのは、「リアルな成長」、すなわち「行動変容」のための支援を目指しているからです。

行動を変えていくためには、違う行動を取ることの意味とメリットを自分で理解しないとなりません。そのためには、違うモノの見方を得たり、成功・失敗の豊富な経験が必要です。

異なる視点を身につけたり、経験から多くを学ぶためには、他者の支援がどうしても必要になります。なぜなら、人間は変化を嫌う生き物であり、放っておくと自分に都合の良いものばかりを見てしまうからです。

だからこそ、仕事の経験が豊富な上司とコミュニケーションを取ることによって視野を広げたり、過去の経験を昇華していく事が1on1役割として求められているのだと思います。

―――仕事に忙殺されていると、なかなか自分自身で振り返る機会もありませんし、特に失敗経験などは直視し辛いというのは誰しも経験があるのではないかと思います。その様な場合に、部下が自身と向き合って内省を促すきっかけを作っていくことが上司には求められているという事ですね。星野さん、本日もお時間頂きありがとうございました。